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日々ふと思うことを徒然なるままに書き綴る個人的エッセイあるいは回想録。
まだ小学校にも上がらないくらいの幼児時代、流れるプールに沈みかけたことがあります。
 
それは町内会の「こども会」で連れて行ってもらったプールでのことでした。
たぶん、大勢の子どもに対し、引率する大人の人数が少なかったか何かで、自分と、もう一人の幼なじみの男の子だけ、他の皆と離れてふたりきりになった時間帯がありました。
 
経緯はさすがに忘れましたが、最初は子ども用の浅いプールにいたはずが、いつの間にか自分たちは流れるプールのそばにいて、しかも自分はそのうちに一人で、浮き輪も無しに流れるプールの中に入って行ってしまったのです。
 
当然足がつくわけもなく、自分はすぐに危険に気づき、必死にプールの縁にしがみついていました。
幼心にも「今、手を離したら死ぬ」という思いが頭を過りました。
 
その後のことは正直あまり記憶に無いのですが、自分が今こうして生きていることを考えれば、たぶん誰か大人の人が気づいて引き上げてくれたのでしょう。
 
自分にとっては強烈に脳に刻みつけられた記憶なのですが、親たちに聞いても知らないと言われます。
でも、その命の危機に関する部分だけでなく、初めてのコインロッカーの使い方が分からず(←たぶん誰も教えてくれなかったか、その時も近くに引率の大人がいなかった)、周りの人の見よう見まねでコインを入れたまでは良かったものの、カギを引き抜かずにそのままにしてしまったため、後でロッカーの場所が分からなくなって、ちょっとした騒動になったという細かいエピソードまで覚えていますので、少なくとも夢や妄想ということではなかったと思います。
(ひょっとすると、自分が溺れかけたということ自体、自分も含め誰も親に話さなかったのかも知れません。)
 
この時のことを思い出すたびに思うことが「子どもの判断力・思考力は大人のソレとは全く違う」という事実です。
 
大人からすると「何で足がつくはずもない大人用のプールに入って行くんだ?」と思うことでしょう。
でも、まだ保育園児で、今まで保育園の浅いプールか家庭用のビニールプールにしか入ったことがなく、大人用の深いプールですら初めて見る自分に、プールの深さに対する警戒心はありませんでした。
 
その時の自分に見えていたのは、流れるプールの中で楽しそうにはしゃぐ人たちの姿だけ。
何の危機感も抱かず楽しそうに笑う彼らの姿から「このプールには何の危険も無い」「このプールは楽しいところだ」「自分が入っても大丈夫だ」という、間違った推論を導いてしまったのです。
 
中には「頭のデキの悪い子だったから、そんなことしたんだろう」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、後に(高校生時点で)塾にも通わず特別な勉強もせず通常運行で国語の偏差値80を叩きだすことになる自分でさえ、この体たらくなのです。
子どもの判断力・思考力を甘く見てはいけません。
 
(まぁ、自分の場合は“天然”という要素が、多少の頭の良さ程度は台無しにしてしまっている可能性がなきにしもあらずではあるのですが……。)
 
そもそも判断力や思考力というものは、その元となる知識や記憶があって初めて真っ当な答えを導き出せるものです。
子どもは生きてきた年数が少ない分、その知識や記憶が大人に比べて圧倒的に足りていません。
そんな子どもに対し「大人と同じ判断をせよ」ということ自体、実はとてつもなく無茶で無謀なことなのです。
 
たとえば、火にかかったヤカンに無防備に触れてヤケドをする子どもがいます。
大人は「なんでそんな熱いものに素手で触るの!」「ヤケドをするに決まってるでしょ!」と怒るかも知れません。
でも、ひょっとするとその子には「火にかかったヤカンは熱いものだ」「熱いものに触るとヤケドをするのだ」という知識自体が、まだ無いのかも知れません。
そして、沸騰してピーピー音を鳴らすヤカンや、そこから噴き出す白い湯気が不思議で、面白くて、つい触ってみたくなってしまったのかも知れません。
 
多くの大人は忘れてしまっているのかも知れませんが、人間誰しも、最初は知らないことだらけです。
大人なら当然知っている危険なアレコレについても、子どもは知りません。
中には本能的に察知して危険を回避できるタイプの子もいるのかも分かりませんが、そんな子どもが全体の何%くらいを占めているのかなど、たぶん誰も知りませんので、そこはあまり期待しない方が良いでしょう。
 
今の世の中、周囲を見渡すと「子どもは知識が少ないから、判断力も低い」というその事実を把握できていないまま、子どもに無理な「正解」を求め、無闇に叱る大人が多いように見受けられます。
叱るだけでは子どもの判断力は伸びません。
たぶん、判断力の元となる“知識”を、ちゃんと、子どもにも分かりやすい言葉で教えてあげなければいけないのです。
 
子どもだけでなく、大人についても言えることですが、人間の判断力・思考力の源となる知識・記憶は個人個人で違っています。
だからどんなに自分が「ここではこういう風に判断するに決まってる」と思っていても、別の誰かはその場面で、思いもよらない判断をすることがあります。
それは持っている知識・記憶が一人一人違っている以上、ある意味仕方のないことなのです。
 
なので、世の中、自分の判断力・思考力だけを基準にして他人の行動――特に子どもの行動を予測するものではありません。
「他人(子ども)は時に思いもよらない行動を起こすものだ」ということを、常に頭の隅に置いておけば、ある程度のリスクは回避できるのではないでしょうか。
 
遊んでいる時の事故で死ぬ子どものことを、一部の特殊な事例、滅多に起こらないこと、あるいは単に運が悪かった、などと捉えている大人の方はまだまだ多いかも知れません。
でも、たぶんそれは、知識が無いがゆえのちょっとした判断ミス、経験が無いがゆえに危険を甘く見てしまうことなどにより、簡単に起きてしまう、どんな子にも起こり得る事例なのです。
 
そのことをちゃんと踏まえて、あらかじめ子どもたちに、ちゃんとそういった危険についての知識を分かりやすく教えることができるなら、もっと事故は減らせるのかも知れません。
ただ、その“分かりやすく”“子どもの頭にしっかりと刻まれるような形で”教えるということ自体、なかなかに難易度の高いことなのかも知れませんが……。

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津籠睦月(つごもりむつき)
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【好きな小説ジャンル】
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漢検2級(準1以上は未受験)。国語の最高偏差値80(高2時点)。
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